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原因は本当に老朽化だけ?~笹子トンネル事故

2012年12月31日 06:00
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原因は本当に老朽化だけ?~笹子トンネル事故

 中央自動車道・笹子トンネル上り線で起きた天井板落下事故。29日にはトンネルの下り通行する形で一宮御坂インターチェンジ(IC)~勝沼IC間がようやく仮復旧した。9人の命を奪った崩落事故の原因は「トンネル構造物の老朽化」とする意見が圧倒的だが、それだけでは済ませられない要因も浮上している。


 ◆要因その1=ケミカルアンカーを過信していたか

 トンネルの天井板を吊っていた「アンカーボルト」は、樹脂製の接着剤で固定されていた。この工法は「ケミカルアンカー」と呼ばれる。建設業界に詳しいジャーナリストは「業界はケミカルアンカー(接着剤)に絶対的な信頼を寄せてきた」と話す。

 しかし、“ケミカルアンカー神話”はすでに崩れていた。2006年7月、米ボストンにある高速道路の「ビッグディッグトンネル」で天井板が落下し、女性1人が死亡。独立行政法人「日本高速道路保有・債務返済機構」は08年にまとめた報告書でボストンのトンネル事故を分析し「事故原因はケミカルアンカーの劣化によるもの」と報じた地元紙の記事も引用している。報告書は同機構のウェブサイトで今も公開されている。

 山梨県警によると、笹子で抜けたアンカーボルトに目立った損傷がないことが確認され、事故原因に「接着剤の劣化」が浮上している。米国の事故情報は国交省にも届いていたはず。しかし同省は「個々の職員は知っていたはずだが、省内で情報共有されたかは不明」(道路局高速道路課)などと釈明。同省は10年前からインフラ老朽化の対策を練っていたはずだが、米国の“教訓”は活かされることなく、笹子の事故が起きた。


◆要因その2=設計や維持管理にも甘さがあった?

 品質工学の専門家からは「事故が起きた時に被害が最小になる『安全設計』の視点が欠如している」との指摘もある。笹子の事故は一部の天井板が落下した後、立て続けに約130メートルにもわたって重さ約1・2トン(1枚)もの天井板が次々と落下し、車両を直撃した。

 最悪の事態に備え、車両への直撃を回避するなど被害を軽くする設計が採用されなかったのか。事故の検証が進むにつれ、設計の不備を指摘する声が強くなる可能性も否定できない。

 点検体制の甘さも明らかになってきた。今年9月にNEXCO中日本が笹子トンネル下り線で行った点検では6カ所のアンカーボルトが脱落し、同社は「アンカーボルト等で損傷変状が著しい」と認識。にも関らず「機能面からみて速やかに補修が必要な損傷はない」などとしていた。しかし、事故を受けた同じ下り線の点検では、アンカーボルトの脱落や緩みなど670カ所の不具合を見つけた。

 老朽化が進み、大規模更新が不可欠と叫ばれている全国の道路構造物。しかし「一般論として道路構造物は設計段階で耐用年数を設定することはしない」(道路局)のが実態だ。耐用年数や点検項目が不明瞭な中で、誰が、いつ、どのような方法で道路利用者の安全を担保するのか。こうした課題を放置したままだと、例えインフラを新しくしても、同じ問題が数十年後に起きかねない。

(全文は本紙及び日刊自動車新聞電子版でお読み下さい)

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